トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男

4月 3rd, 2006 at 21:13 by linchira

「トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男」を見た。
(渋谷UPLINK Xにて)

今回は、「ブロガー割引」なるものを利用した。
「観賞後にトラックバックを張ることを条件に、1200円で観られる」というもので、僕のように前売り券(1300円)のためだけに渋谷まで出向けない人にはありがたいシステムだ。
作品を観たい理由と自分のblogのURLをメールで送り、返信を印刷して受付で見せるだけ。
メールは一日程度で返信されるので、条件の合う人は利用されると吉。
(ただし、当日券なので早めに行った方がよい)
他にも、「宅録割引」なるものもあって、家にある録音機材の写真・画像を録って見せると1200円になるとのこと。
こっちでもよかったかな?

UPLINK Xは、渋谷のBOOK 1st前の道と東急本店がぶつかったところの道に入っていき、「あれ、間違ったかな〜?」と思う頃に右側にあるビルの2階(ローソンの手前)。
1階はレストランになっている。
JR渋谷駅から、徒歩15分といったところ。

上映30分前に行ったので、一番で入ることができた。
中に入ると、イベント会場というか、大きめのスタジオというか、ビルの一室にスクリーンとJBLのスピーカー×4と普通の椅子が30脚くらい置いてあった。
大昔に行った「フィルムコンサート」を思い出した(笑)。

最前列の真ん中左の席に着席。
上映前には、エリック・クラプトンの「461 Ocean Boulevard」(当然、ダウドのプロデュース作品)がかかっていた。
アナログでのA面が終わる前に、予告編が開始。
何か、とてもマイナーな雰囲気の作品ばかりだった。
今日の作品の客層には合わないのでは・・・

10分程度経って、本編上映開始。
1時間半程度の作品なのだが、非常に興味深く観ることができた。
この作品は、簡単にいえば、ポピュラー音楽の録音現場の生き証人であったエンジニア/プロデューサー、トム・ダウドの偉業を伝えるドキュメンタリーである。
ダウド本人、彼にまつわる多くの人々(レコード会社関係者、同業者、ミュージシャン)のコメントと証言によって、ダウドの成した録音技術の革新、共に音楽を創造する”仲間”としての魅力が綴られている。

ダウドがエンジニアまたはプロデューサーとして関わった作品は、↓の通り。
TOM DOWD DISCOGRAPHY
デレク・アンド・ザ・ドミノスの「Layla」、クリームの「Wheels Of Fire」、オールマン・ブラザーズ・バンドの「Live at Fillmore East」、レイナード・スキナードの「One More from the Road」、オーティス・レディングの「Otis Blue」、ロッド・スチュワートの「Atlantic Crossing」等々、歴史を創った名盤の数々・・・
ロック/R&B/ジャズに跨がる、錚々たる作品が並んでおり、その数も含めて圧倒されるしかない。

原子物理学を学んでいたダウドは、第二次大戦中に「マンハッタン計画」に携わり、その後ビキニ環礁での核実験にも関わっていた。
除隊後に大学に戻らず(軍での経験が学問の先を行ってしまったため)、アルバイトで経験した録音エンジニアの道に進んだことが彼の人生を大きく変えた。
「大量破壊兵器」から人々の心を動かす音楽への転身、彼にとって本当に幸運なことだっただろう。

黎明期からアトランティック・レコードにエンジニアとして関わり、レコーディング技術の革新を推進した。
いち早くマルチトラック録音を導入し、50年代に初の8トラック録音機材を開発。
(彼が8トラックを開発したとは知らなかった)

自身もミュージシャンだった(主にベースを演奏)ダウドはエンジニアリングのみならず音楽的な提案もしばしば行い、プロデュース業も行うようになった。
(クリームの「Sunshine Of Your Love」の特徴的なドラムパターンは、ダウドの提案を取り入れたらしい)
主に、スワンプ〜サザンロック系を中心に活躍し、ミュージシャンからの信頼も厚かった。
特にエリック・クラプトンは彼を「父親のような存在」とまでいっていた。
(クラプトンが父親を知らずに育ったことを考えると、意味深である)

邦題の「レイラをミックスした男」というのはどうなんだ?という感じだが(原題は「Tom Dowd & The Language Of Music」)、ラスト近くに「Layla」のマルチトラックをミキサーを操作しながら解説するシーンは、確かにこの作品のハイライトとなっている。
クラプトンとデュアン・オールマンのギタートラックを単独で聴かせるのだが、デュアンのスライドギターの凄まじさがはっきり分かって、ぞくぞくさせられる。

ここでのダウドはもう70歳を過ぎているのだが、まるで少年のような表情で嬉々としていて、微笑ましい。
また、ミックスという作業がいかに音楽的であるかをも物語っていると思う。
いかに演奏がよくても、それを多くの人が何度も聴くためには、何らかの録音物に記録しなければならない。
それをよりよい音で、より音楽的に記録するために、レコーディングエンジニアの担う役割は決して小さいものではない。
エンジニアも、また音楽を創造しているのである。

映画は、ダウドの達者なジャズピアノの演奏で静かに幕を下ろす。
映画の完成を待たず、ダウドは2002年に77歳で亡くなった。
(映画は2003年に完成したが、ダウドはラフ編集したビデオを死の一週間前に観ることができたそうだ)
低予算ゆえ、ヴィデオで撮影され、それでも何度か製作が中断したそうだが、この貴重な作品を完成させたマーク・モーマン監督には感謝しなければならない。
次作は、あのジャズベーシストの鬼才、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリーだそうで、これも楽しみである。

ともあれ、ダウドの手がけた音楽を好きな人ならば、必見の作品である。
(レコーディングに携わっている人は、いうまでもない)

No Responses to “トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男”

  1. すばらしい日々♪ Says:

    トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男☆…

    遅ればせながらトラックバック返ししておきます。 りんちらさんほど理解できてませんが。。。 (more…)

  2. ピンクサンタガーデン Says:

    はじめまして。DVDが発売していますね。私は購入します。ブログというものは慣れていませんが音楽の記事を書いている方のものは時間を忘れてみてしまいます。ジャコの映画は完成したのですかねぇ….

  3. linchira Says:

    はじめまして、コメントありがとうございます。
    ダウドのDVD、未公開シーン+インタビューは見たいですね。
    ジャコの伝記映画とキース・ムーンの伝記映画、どっちが先に完成するのでしょうか(笑)
    もっと音楽関係のエントリーを書きたいんですが、書いてると長くなってしまって、なかなか手が付きません・・・
    もう少し、がんばります。

  4. ピンクサンタガーデン Says:

    ジャコの伝記映画は完成していないのですね…はじめてジャコを聴いたのは30年前でした…自分が50近くになっている事と、音楽の知識が20年間くらい飛んでいることを『りんちらな日々』を読んで痛感しました。

  5. linchira Says:

    映画の制作が遅れる原因は多々あるのでしょうけれど、伝記の場合は故人の親族・関係者の意向が係わったり、より難しいものなのかもしれません。
    拙ブログは最近の音楽をほとんどフォローしていませんので、こちらで痛感されているのはまずいかもです(苦笑)。

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